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公共危険罪

不特定または多数人の生命・身体・重要な財産の安全を脅かす罪が公共危険犯。

 

 

騒乱の罪(刑法第2編8章)、放火及び失火の罪(同9章)、出水及び水利に関する罪(同10章)、往来を妨害する罪(同11章)など

 

 

 公共危険犯は、抽象的公共危険犯と具体的公共危険犯とに分かれ後者では、公共危険が構成要件の内容として規定され、具体的に発生を立証する必要があるが、

前者では、構成要件に該当する行為があれば、(抽象的)公共危険の発生が法的に擬制されるものとされている。

 

この見解によれば、抽象的公共危険犯は、公共危険は立法の理由または動機にすぎず、なんら公共危険の発生を要しないため、

 

故意の面から、具体的公共危険犯は、行為者が公共危険の発生を予想が故意の要素とされるが、抽象的公共危険犯には、公共危険の認識は故意の成立に不必要とされる。

 

 

 

 

放火罪のポイント

放火罪はまず保護法益が公共の安全である

 

社会的法益に対する罪として分類される

放火罪の保護法益は公共の安全不特定または多数人の生命・身体・財産である

放火罪は犯罪とは異なり、社会一般の法益に対する犯罪

殺人の場合にはAさんとBさんが殺害された場合、Aさんに対する殺人罪とBさんに対する殺人罪併合罪関係にあります。殺人罪の保護法益が「個人の生命」であったからです。

ところが、放火罪の場合には1つの放火でA家とB家が燃えた場合、現住建造物放火罪の併合罪になるわけでなく放火罪の保護法益は「社会に対する公共の安全」なので、現住建造物放火罪1つしか成立しないのです。

社会に対する罪は分けられない=併合関係にならない、と考える

 

 

現住建造物等放火罪(刑法108条)の要件

(現住建造物等放火)第百八条 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

 

現住(現在)建造物放火罪の要件

①放火②建造物③現住性・現在性④焼損⑤故意

 

 

 

 

 

①放火放火罪の実行の着手に当たる

ガソリンは可燃性が高いので、ガソリンをまいた時点で放火行為(実行の着手)が認られるが灯油は可燃性が低く灯油をまいた時点では実行の着手は認められず、実際に火をつけてはじめて放火行為(実行の着手)が認められます。

 

②建造物

論点になりやすい部分です。まず、放火場所が建造物、放火場所と建造物が廊下でつながっていたり、アパートの一室で放火されたり、エレベーターで放火されたり

と、その放火場所からどの範囲までを建造物かがわからない場合がよくあります。

いわゆる建造物の一体性(物理的一体性)という論点

 

建造物の一体性は、㋐構造的一体性+㋑延焼可能性or機能的一体性より判断する。

㋐構造的一体性

㋐構造的一体性は、放火場所からつながっている場合。廊下とかで接着していれば構造的に一体であるといえる

たとえばエレベーターに放火した場合、エレベーターとマンションは構造的に一体といえ

もう一つ例は宿直員就寝場所と本殿がつながっている神社で、本殿に火をつけた場合、本殿と宿直就寝場所は構造的に一体といえます。つながっている

 

 

 

㋑延焼可能性or機能的一体性

㋐構造的一体性が肯定されただけでは、建造物一体として見ることはできず構造的一体性の次の観点として、延焼可能性、機能的一体性を検討すると

延焼可能性とは、燃え移る可能性のことです。燃え移る可能性が少しでもあったら延焼可能性ありと判断される。完全に延焼可能性がない、と判断された初めて延焼可能性は認められないことになります。

また、延焼可能性はあくまで「可能性」なので、実際にその部分まで燃え移っている必要はなし。

機能的一体性とは使用上の一体性と言われるものです。言葉的に機械によるものかなー、っと思うかもしれませんが、これは違います。簡単にいうと人の方から火の方へ来る可能性のことです。放火場所にわざわざ人が来る可能性がある場合には人がいる場所と放火場所は機能的に一体といえる

 

 

エレベーターに放火した場合、エレベーターがスプリンクラー装備を備えた延焼可能性の全くないものであったとします。しかし、エレベーターはマンションにとって人が部屋へ向かうときに使用するものであり、人の方がから燃えているエレベーターに来る可能性があります。よって機能的一体性が認められることになるのです。

宿直員就寝場所と本殿についても同様です。本殿がスプリンクラー装置等を備えて延焼可能性が全くないものであったとしますが、宿直員は1時間に1回見回りが業務とされていた場合、宿直員側から放火場所(本殿)に向かってくる可能性があります。よって機能的一体性が認められることになるのです。

 

建造物がどの範囲かは、㋐構造的一体性㋑延焼可能性or機能的一体性という㋐㋑両方が満たされるか検討することでわかる。

③現住性・現在性

現在性は簡単です。現に人がいるかです。この人がいる場所と放火場所が簡単に建造物として一体であると認められる場合はいいのですが、よくわからない場合には、上記の㋐構造的

一体性㋑延焼可能性or機能的一体性で判断します。

なので、検討手順としては②建造物要件を先に検討した方がいいと思い、この順番にしました。②で判断した建造物としての範囲に人がいる場合は現在性の要件を満たすといえるわけです

一方、現住性は慎重に判断しましょう。現住性とは人が住居として使用している建造物ということです

 

 

④燃焼

 

独立燃焼説は、火が媒介物を離れて独立して燃焼している状態になったことを指します。

マッチで燃やした場合には、火がマッチから離れてマッチがなくても火が継続して燃える状態になったということです。

意外と早く既遂が成立するという点に注意してください。

⑤故意

通常は故意は当たり前として取り上げてきませんでしたが、今回は特別です。意外と重要になるのでしっかり取り上げてみます。

現住建造物放火罪の故意は、現住・現在性の認識が必要であるという点が意外と見落としやすいので注意してください。「建物を燃やすぞ~!」という故意ではなく「人がいる(住んでいる)建物を燃やすぞ~!」という故意が必要というわけです。

すると、「人がいない建造物を燃やすぞ~!」という故意で実際には人がいる建造物を燃やした場合にはどうなるでしょう

管理・監督過失
管理・監督過失とは、文字通り、管理・監督者という立場にある者の過失責任です。『空飛ぶタイヤ』において、主人公・赤松が問われたのはまさにここだと思います。問題となる事例としては2つあって、①結果を惹起した直接行為者の過失行為を防止すべき立場にある監督者の過失の事例(狭義の監督過失)、②結果発生を防止すべき物的・人的体制を整備すべき立場にある管理者の過失の事例(管理過失)があります。

まず、①「狭義の監督過失」についてですが、直接行為者(実際に過失行為を行った人)を監督すべき立場にある監督者について結果の予見可能性を認めるためには、直接行為者の過失行為が予見可能であることが必要となります。しかし、偶然が重なって事故が起きてしまった場合に問われるのが過失犯だといえると思います。ここから分かるように、直接行為者は通常、適切に行為を行おうとしてたまたま過失行為をするに至っているので、結局のところ監督者が過失行為を予想することは難しいのです。これを踏まえて、監督者に直接行為者の過失行為について予見可能性を認めるためには、直接行為者が過失行為を行う兆候を認識しているかまたは予想できたといえる場合でなければならないといえます。例えば、普段からよくミスをしていたり、過労などその他の事情からミスが起こりやすい状況にある場合などが考えられますね。

次に②「管理過失」についてですが、これは結果を回避するための危機管理体制をきちんと構築していたかが問われることになります。危機管理体制の不備だけでは結果が生じるわけではありません。この問題は現に危険が潜在し、それが体制の不備ゆえに現実化した場合に問われることになります。そのため、危険が潜在することについての予見可能性が必要と考えられています。

以上のように、「過失犯」と一言で言っても、様々な問題がある。自動車を運転される方(自動車事故については別の法律が制定されていますが)や工事現場などで働いている方をはじめ、過失による事故というのは誰でも行為者あるいは被害者、いずれの立場になってもおかしくないと思います。自分はそんなミスしないとたかをくくって無茶をせず、常に危険と隣り合わせであることを忘れないようにすべきことを(自戒も込めて)申し上げて結びといたします

か。

 

さらに忘れてはならないのが、故意の方の犯罪の未遂を検討するということです。未遂犯と不能犯の論点もかかわりますが、不能犯を一般人の具体的危険として考えるならば、基本的に不能犯とはなりえないので、現住建造物放火罪の未遂が成立することになる

条文は刑法109条です。

(非現住建造物等放火)
第百九条 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

1項は現住性・現在性がなくなった建造物の場合で、他の要件は現住建造物等放火罪(刑法108条)と変わりません。

①放火②建造物③非現在性・非現住性④焼損⑤故意(人がいない建造物を放火するという認識・認容)

 

 

建造物等以外放火罪(刑法110条)の要件

条文は以下の通りです。

(建造物等以外放火)
百十条 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

これは建造物等以外=建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑以外のものに対して放火した場合の罪です。よくあるのは自動車ですね。

この場合の要件は以下のようになります。

①放火②建造物等以外の物③燃焼④公共の危険を生じさせたこと⑤故意

 

 

 

公共の危険

公共の危険が何かについては学説上対立がありますが、不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険と考えておけば大丈夫でしょう。延焼の危険に限られません。

また判断基準としては事後的に客観的に判断されます。もちろん考慮要素として行為時の危険感も含まれる

さらに、「よって」と言いう文言からわかるように、建造物等以外放火罪は一種の結果的加重犯です。そのため、公共の危険に対する認識は必要ない