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事後強盗罪

(事後強盗)
第二百三十八条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
 
①窃盗
②財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために(目的)
③暴行又は脅迫
④窃盗の機会性という要件

事後強盗罪が成立すると「強盗として論ずる」ことになるので、強盗罪と同様に扱うこととなります。

 

上記の条文を読めば分かる通り、「窃盗が」となっている以上、
事後強盗罪の主体は窃盗犯である必要があります。

 

〇「窃盗」には窃盗既遂のみならず「窃盗未遂」も含む
 
これについては、判例「窃盗」には「窃盗未遂」も含む
事後強盗罪は窃盗が逮捕を免れるなどの目的のために暴行に及ぶことが多い点から設けられているところ、窃盗が未遂に終わった場合でも上記目的のために暴行にでることは多いので、窃盗未遂も含む
 

 

なので、「窃盗」には窃盗既遂のみならず「窃盗未遂」も含むというのが妥当

 

 

事後強盗罪は、一定の目的が要件として課されています

 

①財物を取り返されることを防ぐ
②逮捕を免れる
③罪証隠滅

 

のいずれかの目的が必要となります。

 

なお、これらの目的で暴行・脅迫がなされることが要求されているのみなので、上記の目的が達成されたか否かは事後強盗罪の成立に全く関係ありません

 

例えば、窃盗犯が自分を

逮捕しようと追ってきた者を逮捕を免れるために暴行したが結局逮捕された場合、事後強盗罪は成立することになるわけです。

居直り強盗と事後強盗罪の区別

 

目的要件との関係でよく試験で問題になるのが、居直り強盗との区別、というものです。

 

居直り強盗とは、一度財物を奪取した後で、さらに財物を奪取するために暴行・脅迫を行うような行為です。

 

このように、居直り強盗と事後強盗は、財物奪取の後でさらに暴行・脅迫を行う点で類似性を有するので、両者をいかなる基準により区別するかが問題となる
そもそも強盗罪では暴行・脅迫が要件とされています。

 

そして強盗罪における暴行・脅迫は財物奪取に向けられたものである必要がある

 

つまり、普通強盗罪は財物を奪取する手段として暴行・脅迫が用いられるが、事後強盗罪においてはすでに財物を取った後で暴行・脅迫を行うので、事後強盗では、普通の強盗罪のように財物奪取の手段として暴行・脅迫をすることはなく、むしろ取り返されることなどを防ぐために暴行・脅迫をするので、居直り強盗の場合は「財物奪取のために」暴行・脅迫に対して、事後強盗は上記①〜③のために暴行・脅迫をする
つまり、居直り強盗と事後強盗罪の区別は、暴行・脅迫の「目的」によって区別される

 

居直り強盗と事後強盗罪の区別、まとめ 
居直り強盗=財物奪取のために暴行・脅迫を行う
事後強盗罪=財物を取り返されることを防ぐ or 逮捕を免れる or 罪証隠滅のために暴行・脅迫を行う

 

 

事後強盗罪も普通の強盗罪と同様に「暴行又は脅迫」が要件とされる

 

事後強盗罪の暴行・脅迫の程度も普通の強盗罪と同じように「反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫」である必要がある

 

事後強盗罪も「強盗として論ずる」とされている以上、両者の均衡の観点から、強盗罪と同じように、「反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫」を必要とするべきとなっている
なので、試験で事後強盗罪が問題となった場合は、体格差、犯行時刻、犯行場所の状況、行為の態様、被侵害法益などを踏まえて、反抗を抑圧するものといえるかどうかをしっかり検討しなければなりません。

 

窃盗の機会性

事後強盗罪の要件として、条文上明らかな上記3要件の他に、暴行・脅迫が「窃盗の機会」になされることが要求されます。

 

これは、強盗罪においては、財物奪取のために暴行・脅迫を行うというように、暴行・脅迫と財物奪取が一連のものとして結びついています。

 

それに対して、事後強盗罪では窃盗の後に暴行・脅迫がなされるので、両者の間に時間的な隔たりがあるばいいもあるなど、普通の強盗罪ほど窃盗罪との結びつきが強くありません。

 

しかし、事後強盗罪も「強盗として論ずる」以上は、普通の強盗罪と同じほどの窃盗罪と暴行脅迫との関連性を要求するべきです。

 

ということで、事後強盗罪においては、暴行・脅迫が窃盗の機会になされることによって両者の結びつきが求められるということになるのです。

 

窃盗の機会の判断基準

 

 

窃盗の機会の判断基準

判例によると窃盗の機会性の判断基準は「被害者等から容易に発見され,財物を取り返され,逮捕されうる状況」(最決平14・2・14)が継続していたかどうか、そのための考慮要素が、①時間的場所的近接性 ②被害者等による追求の有無

例えば、窃盗の現場から数分後100mしか離れてなくしかも被害者に追われていた場合、①時間的場所的に近接し、②被害者等による追求もあるので、問題なく「窃盗の機会」といえる

 

でも、窃盗から数時間後に10キロ離れた場所でのんびりしていた場合は、①時間的場所的に近接していないし②被害者等による追求も全くないので、「被害者等から容易に発見され,財物を取り返され,逮捕されうる状況」ではないため、「窃盗の機会」ではないとなります。

 

なお、窃盗の機会が否定された場合は、窃盗罪(未遂罪)及び暴行罪等が成立することになる
事後強盗罪の既遂・未遂の区別については「窃盗の既遂・未遂」によって区別するということとされる。

 

なので、窃盗未遂犯が逮捕を免れるなどのために暴行・脅迫をした場合は事後強盗未遂罪が、窃盗既遂犯が逮捕を免れるために暴行・脅迫をした場合は事後強盗既遂罪が成立する強盗罪は最終的に窃盗が達成された場合に既遂が成立するため、事後強盗罪にも同様に窃盗罪の既遂・未遂によって区別する
事後強盗罪は財産犯的側面と生命身体侵害犯的側面があり、第一義的には前者得意解され、財産犯たる窃盗罪による区別の方が妥当と考えられるという理由もありえる。