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行政法 

法令に違反した「違法な行政行為」や、

法令には違反していないが、

裁量権の行使が不適正な

「不当な行政行為」を、

「瑕疵ある行政行為」という

 

・違法な行政行為は、裁判所による是正

・不当な行為は、

職権取消し・行政不服申立てにより是正になる

 

裁判所は、

基本的には法令違反の場合です。

 

行政行為の内容が不当と考えられる場合でも、

それが法令違反なければ、

裁判所はその内容を審査できず、

不当な行政行為は職権による

取消し・行政不服申立てに是正される

 

 

瑕疵は、行政行為の主体や内容、

手続、形式などさまざまな面で問題となる

 

実体の違法と手続の違法があり、

手続の瑕疵には別途に考える必要があります。

その違法が

結論にどれだけ影響するのかも含めて

判断される

処分内容が適法で、手続きが違法という場合に、

手続の違法を是正しても、

結論(処分)が変わらないという場合もある

 

 

「違法な行政行為」の取り消すことのできる行政行為と、無効な行政行為

違法な行政行為は、取り消できるものと、

取り消すまでもなく無効なものに分類できる

 

行政行為はには公定力があり、

原則は、行政行為は権限のある機関によって

取り消されるまでは一応有効とされます。

 

ただし、瑕疵の程度が甚だしく、

有効とされるには

 

手続の違法を是正すれば、結論が変わり得ると判断され、

処分を取り消された判例と、手続の違法を是正したとしても、

結論に影響されないと判断され、手続の違法が処分取消事由に

 

 

 

 

あまりに不合理な場合、取り消しなく当然に無効とされる

 

無効とされた行政行為は公定力はもちろん、

不可争力、自力執行力などの

一切の法的効力が認められないことになります。

 

行政処分を当然無効と判断するには、

 「重大かつ明白な瑕疵」がなければならないとされる

 

 

最高裁は、行政処分を当然無効するには

「重大かつ明白な瑕疵」が必要であるという重大明白説によりつつ、

「瑕疵の明白性」について、

とくに権限のある国家機関の判断をまつまでもなく、

何人の判断によってもほぼ同一の結論に達しうる程度に

明らかであることを指し、外観上一見明白説の立場をとっています。)

 

 

実体法とは、市民および団体の権利、義務および責任を規定する法律

 

実体法は事件の実体に関係し 誰かを訴えたり、訴訟から身を守るのに役立つ

 

 

手続き法の定義

訴訟法は、裁判手続が行われる方法を規定する法律

刑法     賄賂罪

賄賂罪(収賄罪、贈賄罪)の保護法益には争いがあり、純粋性説信頼保護説があるが

賄賂罪の保護法益は、公務員の職務の公正&社会の信頼

 

 

賂罪に当たる行為は、社会的信頼も害する

公務員は社会に重要な立場にある職業というわけです。

(単純)収賄罪は刑法197条1項前段に規定されています。

収賄、受託収賄及び事前収賄
第百九十七条 公務員が、その職務に関し賄賂収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
2 公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。

(単純)収賄罪は公務員側からお金を提供する犯罪」。一般人側からお願いされて公務員がお金を提供する場合は受託収賄罪(刑法197条1項後段)が成立

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偽造罪

偽造罪の保護法益は文書に対する信用

 

公文書は公共のために信用が大事、

私文書も少なくとも当事者間では信用される必要がある。

また、文書というのはいろいろな場面で作られ、証拠として使われる

このように文書は意外と信用性が必要とされる場面が多い=信用性を守らなければならない

よって、文書を偽造するような行為は違法とされる

 

文書偽造罪には複数の種類があります。

まず偽造には有形偽造無形偽造がある。文書偽造罪で重要なのは、公文書偽造罪と私文書偽造です。

 

 

私文書偽造等)
第百五十九条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

1項は有印私文書偽造罪、2項は有印私文書変造罪、3項は(無印)私文書偽造罪・(無印)私文書変造罪です。

出題されるとすれば、有印私文書偽造罪(刑法159条1項)と(無印)私文書偽造罪(刑法159条3項)のいずれかです。要件は署名・印章があるかどうか以外変わりません。

 

 

 

①文書性

文書性はいろいろな考慮要素がありますが、ほとんど文書として認められるため特段論じる必要はないと思います。よっぽど変な物でない限り簡単に認めれば大丈夫でしょう。

文書性を「ちゃんと」論じなければならないのはコピー文書の場合です。

判例・通説はコピーした物にも、原本と同様の社会的機能と信用性があるため、文書性が肯定されるとされています。

さらに現代ではコピーの技術も上がっているので、コピーでもほぼ確実に文書性の要件は満たされるでしょう。

②偽造

偽造の定義をまず覚えましょう。

名義人と作成者の同一性の人格の同一性を偽ることです。名義人と作成者の間で人格的同一性がない場合は偽造ということになります。

 

 

 

作成者は具体的事案に応じて慎重に検討する必要があるのです。たしかにコピーを作成したのは課長ですが、課長はコピーする権限を与えられていました。すると文書の意思主体は会社になるのです。会社が課長にコピーすることを許している場合には意思の享有主体(文書による効果を受ける者)は会社になる

このように名義人は深く考えずに特定する、作成者は逆に慎重に特定する、ということを意識しましょう!

 

 

③有印

有印があれば1項の有印私文書偽造罪、なければ3項の(無印)私文書偽造罪になります

 

有印は名義人の署名・押印を必要とします。でなければ文書の信用性を保護法益とする文書偽造罪において文書の信用性・価値は高まらないからです。

有印があれば文書の信用性が高まる、その文書を偽造したのであるから、有印私文書偽造は無印の私文書偽造罪より刑が重くなる

 

文書偽造罪は偽造すればその時点で犯罪が成立します。そして、さらにその偽造文書を使った場合は、別に行使罪が成立するのです。

偽造公文書行使罪は刑法158条にあります。

 

 

 

偽造文書の行使とは、不真正又は内容虚偽の文書を真正なもの又は内容真実のものとして使用することです。

偽造公文書であれ偽造私文書であれ、真正なものとして使用すればいい

一方、偽造運転免許証は携帯しているだけでは行使ではなく、警察官等に見せた場合にはじめて「行使」となるとした裁判例もあるので注意しましょう。

罪数

 

一個の行為が二個以上の罪名に触れ

又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他

の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。が観念的競合

 

住居侵入罪から犯罪が成立する場合はすべて牽連犯の関係になる

住居侵入から強盗や住居侵入から殺人、住居侵入から傷害、住居侵入から放火など、すべて牽連犯。

また牽連犯にはかすがい現象というものがあります。併合罪関係にあるものでも牽連犯が成立すると一罪として扱われる

 

 

 

文書偽造罪→偽造文書行使罪は牽連犯

文書偽造罪が成立する場合、

その文書は行使されている場合がほとんどで、

偽造文書行使罪も成立するでしょう。

 

 

 

 

原則が併合罪で、観念的競合牽連犯包括一罪すべて成立しなかった場合の例外を最初に考えるため併合罪はあくまですべての例外が当てはならなかったときの最後に検討し、併合罪が成立しないということはなく最後では併合罪

成立する

業務妨害罪

業務妨害罪とは

業務妨害罪」とは、「信用及び業務に対する罪」に規定されている次の3つの犯罪を指し



 

  • 組合や団体の活動
  • サークル活動
  • ボランティア活動
  • PTAなどの組織活動
  • 有料・無料のイベント・展覧会・セミナーなど



しかし、業務妨害罪では、利益の有無に関係しない文化的・精神的な活動も業務にあたる

偽計業務妨害罪とは

ニュースなどでも報道される機会が多いのが「偽計業務妨害罪」です。
偽計業務妨害罪が成立する要件や罰則などは、下記の通りになります。

  1.  

    【刑法第233条(信用毀損及び業務妨害)】
    虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損し、またはその業務を妨害した者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。


    刑法第233条は、信用毀損罪と偽計業務妨害罪という2つの犯罪を規定しています。
    業務妨害の結果が生じた場合は偽計業務妨害罪が成立し、相手の経済的な信用評価に対して危害が加われば信用毀損罪に問われますが、どちらが適用された場合でも罰則は同じです。

  2.  

    偽計業務妨害罪が成立するのは、次の2つの要件を満たす場合

    • 虚偽の風説を流布、または偽計を用いること
    • 他人の業務を妨害すること


    「偽計」とは、人を欺き誘惑する、人の錯誤や不知を利用すること
    つまり、相手をだます、虚偽の情報を流すなどの方法を用いる行為が「偽計」とされる

    「他人の業務を妨害する」は、「実際に業務の遂行を妨げる結果を生じさせた」場合

  3. だけでなく、「業務が妨害される危険がある状態」を生じさせた場合も含みます。
    たとえば、相手にうそを看破されたとして実際に業務妨害の「結果」は

  4. 生じさせなかった場合でも、業務妨害の「危険」を生じさせてしまったなら、

  5. 偽計業務妨害罪は成立する

    偽計業務妨害罪にあたりうる行為としては、次のような例が考えられます。

    • インターネット上の口コミを利用して、飲食店について「あの店で食事をしたら異物が入っていた」などのうその情報を流した
    • デリバリーサービスを提供している飲食店に対してうその注文をした
    • 実際に利用する意思がないのに宴会の予約を入れた
    • 感染症にかかっているかのように装って飲食店を利用し、その状況をSNSにアップして消毒や保健所への通報などを余儀なくさせた
    • ライバル店への嫌がらせ目的で、コインロッカーの鍵を閉めて持ち去り、コインロッカーを使えない状態にした


    嫌がらせやいたずらのつもりで行った行為でも、

  6. 厳しく罰せられる可能性がある、と心得ておくべき。

威力業務妨害罪とは

  1. 威力業務妨害罪の法的根拠と罰則

    威力業務妨害罪は、刑法第234条に規定されています。

    【刑法第234条(威力業務妨害)】
    威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。


  2. 威力業務妨害罪が成立する要件と具体例

    威力業務妨害罪が成立するのは、

  3. 次の2つの要件を満たす場合です。

    • 威力を用いたこと
    • 他人の業務を妨害すること


    ここでいう「威力」とは「相手の意思を制圧する程度の強い威勢を示すこと」を意味します
    脅迫罪の場合には、相手を脅して畏怖させたり、

  4. 強制わいせつ罪のように相手を抵抗できない状態にするなどの強い「有形力」が

  5. 必要とされますが、「威力」にはもっと幅広い範囲の行為が当てはまります。
    大声で怒鳴る、過剰に暴れる、危害を加える内容で脅すといった行為のほか、

  6. 強い勢いで何度もクレームを繰り返すといった行為も、

  7. 威力業務妨害罪における「威力」に該当しえます。

    「他人の業務を妨害する」という点では、

  8. 偽計業務妨害罪と同様に、威力業務妨害罪でも、

  9. 実際に業務妨害の「結果」は生じなくても

  10. 業務を妨害する「危険」を生じさせたなら成立するおそれがある。



    以前は爆破や殺人などの犯罪予告が検挙される事例が主流でしたが、

  11. 近年では動画撮影などの目的でいたずらや脅迫・強要まがいの行為に走り、

  12. 刑事事件化する事例もある。
    たとえ軽い動機だったとしても、

  13. 実際に業務妨害の事実や危険が生じていれば

  14. 威力業務妨害罪が成立して厳しく罰せられるため注意が必要です

 

一般的に「業務妨害罪」とは偽計業務妨害罪・威力業務妨害罪を指すが、

法律が整備されるなかで昭和62年に追加されたのが「電子計算機損壊等業務妨害罪」です。

  1. (1)電子計算機損壊等業務妨害罪の法的根拠と罰則

    電子計算機損壊等業務妨害罪は、刑法第234条の2に規定されています。

    【刑法第234条の2(電子計算機損壊等業務妨害)】
    人の業務に使用する電子計算機もしくはその用に供する電磁的記録を損壊し、もしくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報もしくは不正な指令を与え、またはその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、または使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金に処する。


    電子計算機損壊等業務妨害罪とは、従来の業務妨害罪の加重規定です。
    そのため、偽計業務妨害罪・威力業務妨害罪よりも重い刑罰が規定されています

  2.  

    電子計算機損壊等業務妨害罪が成立する要件は、次の4つです。

    • 業務に使用するコンピューターを対象
    • コンピューター本体やデータの破壊、虚偽データや不正な実行などがあること
    • コンピューターに目的に沿う動作をさせない、あるいは目的に反する動作をさせること
    • 他人の業務を妨害すること


    偽計業務妨害罪・威力業務妨害罪では、

  3. 実行行為が人に向けられますが、

  4. 電子計算機損壊等業務妨害罪では

  5. 業務妨害の実行行為がコンピューターに向けられるという特徴があります
    データやシステムプログラムの削除のほか、

  6. コンピューターウイルスによって不正なプログラムを実行させる行為も該当します。

    具体的には、次のような事例で、電子計算機損壊等業務妨害罪が適用されています。

     

公共危険罪

不特定または多数人の生命・身体・重要な財産の安全を脅かす罪が公共危険犯。

 

 

騒乱の罪(刑法第2編8章)、放火及び失火の罪(同9章)、出水及び水利に関する罪(同10章)、往来を妨害する罪(同11章)など

 

 

 公共危険犯は、抽象的公共危険犯と具体的公共危険犯とに分かれ後者では、公共危険が構成要件の内容として規定され、具体的に発生を立証する必要があるが、

前者では、構成要件に該当する行為があれば、(抽象的)公共危険の発生が法的に擬制されるものとされている。

 

この見解によれば、抽象的公共危険犯は、公共危険は立法の理由または動機にすぎず、なんら公共危険の発生を要しないため、

 

故意の面から、具体的公共危険犯は、行為者が公共危険の発生を予想が故意の要素とされるが、抽象的公共危険犯には、公共危険の認識は故意の成立に不必要とされる。

 

 

 

 

放火罪のポイント

放火罪はまず保護法益が公共の安全である

 

社会的法益に対する罪として分類される

放火罪の保護法益は公共の安全不特定または多数人の生命・身体・財産である

放火罪は犯罪とは異なり、社会一般の法益に対する犯罪

殺人の場合にはAさんとBさんが殺害された場合、Aさんに対する殺人罪とBさんに対する殺人罪併合罪関係にあります。殺人罪の保護法益が「個人の生命」であったからです。

ところが、放火罪の場合には1つの放火でA家とB家が燃えた場合、現住建造物放火罪の併合罪になるわけでなく放火罪の保護法益は「社会に対する公共の安全」なので、現住建造物放火罪1つしか成立しないのです。

社会に対する罪は分けられない=併合関係にならない、と考える

 

 

現住建造物等放火罪(刑法108条)の要件

(現住建造物等放火)第百八条 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

 

現住(現在)建造物放火罪の要件

①放火②建造物③現住性・現在性④焼損⑤故意

 

 

 

 

 

①放火放火罪の実行の着手に当たる

ガソリンは可燃性が高いので、ガソリンをまいた時点で放火行為(実行の着手)が認られるが灯油は可燃性が低く灯油をまいた時点では実行の着手は認められず、実際に火をつけてはじめて放火行為(実行の着手)が認められます。

 

②建造物

論点になりやすい部分です。まず、放火場所が建造物、放火場所と建造物が廊下でつながっていたり、アパートの一室で放火されたり、エレベーターで放火されたり

と、その放火場所からどの範囲までを建造物かがわからない場合がよくあります。

いわゆる建造物の一体性(物理的一体性)という論点

 

建造物の一体性は、㋐構造的一体性+㋑延焼可能性or機能的一体性より判断する。

㋐構造的一体性

㋐構造的一体性は、放火場所からつながっている場合。廊下とかで接着していれば構造的に一体であるといえる

たとえばエレベーターに放火した場合、エレベーターとマンションは構造的に一体といえ

もう一つ例は宿直員就寝場所と本殿がつながっている神社で、本殿に火をつけた場合、本殿と宿直就寝場所は構造的に一体といえます。つながっている

 

 

 

㋑延焼可能性or機能的一体性

㋐構造的一体性が肯定されただけでは、建造物一体として見ることはできず構造的一体性の次の観点として、延焼可能性、機能的一体性を検討すると

延焼可能性とは、燃え移る可能性のことです。燃え移る可能性が少しでもあったら延焼可能性ありと判断される。完全に延焼可能性がない、と判断された初めて延焼可能性は認められないことになります。

また、延焼可能性はあくまで「可能性」なので、実際にその部分まで燃え移っている必要はなし。

機能的一体性とは使用上の一体性と言われるものです。言葉的に機械によるものかなー、っと思うかもしれませんが、これは違います。簡単にいうと人の方から火の方へ来る可能性のことです。放火場所にわざわざ人が来る可能性がある場合には人がいる場所と放火場所は機能的に一体といえる

 

 

エレベーターに放火した場合、エレベーターがスプリンクラー装備を備えた延焼可能性の全くないものであったとします。しかし、エレベーターはマンションにとって人が部屋へ向かうときに使用するものであり、人の方がから燃えているエレベーターに来る可能性があります。よって機能的一体性が認められることになるのです。

宿直員就寝場所と本殿についても同様です。本殿がスプリンクラー装置等を備えて延焼可能性が全くないものであったとしますが、宿直員は1時間に1回見回りが業務とされていた場合、宿直員側から放火場所(本殿)に向かってくる可能性があります。よって機能的一体性が認められることになるのです。

 

建造物がどの範囲かは、㋐構造的一体性㋑延焼可能性or機能的一体性という㋐㋑両方が満たされるか検討することでわかる。

③現住性・現在性

現在性は簡単です。現に人がいるかです。この人がいる場所と放火場所が簡単に建造物として一体であると認められる場合はいいのですが、よくわからない場合には、上記の㋐構造的

一体性㋑延焼可能性or機能的一体性で判断します。

なので、検討手順としては②建造物要件を先に検討した方がいいと思い、この順番にしました。②で判断した建造物としての範囲に人がいる場合は現在性の要件を満たすといえるわけです

一方、現住性は慎重に判断しましょう。現住性とは人が住居として使用している建造物ということです

 

 

④燃焼

 

独立燃焼説は、火が媒介物を離れて独立して燃焼している状態になったことを指します。

マッチで燃やした場合には、火がマッチから離れてマッチがなくても火が継続して燃える状態になったということです。

意外と早く既遂が成立するという点に注意してください。

⑤故意

通常は故意は当たり前として取り上げてきませんでしたが、今回は特別です。意外と重要になるのでしっかり取り上げてみます。

現住建造物放火罪の故意は、現住・現在性の認識が必要であるという点が意外と見落としやすいので注意してください。「建物を燃やすぞ~!」という故意ではなく「人がいる(住んでいる)建物を燃やすぞ~!」という故意が必要というわけです。

すると、「人がいない建造物を燃やすぞ~!」という故意で実際には人がいる建造物を燃やした場合にはどうなるでしょう

管理・監督過失
管理・監督過失とは、文字通り、管理・監督者という立場にある者の過失責任です。『空飛ぶタイヤ』において、主人公・赤松が問われたのはまさにここだと思います。問題となる事例としては2つあって、①結果を惹起した直接行為者の過失行為を防止すべき立場にある監督者の過失の事例(狭義の監督過失)、②結果発生を防止すべき物的・人的体制を整備すべき立場にある管理者の過失の事例(管理過失)があります。

まず、①「狭義の監督過失」についてですが、直接行為者(実際に過失行為を行った人)を監督すべき立場にある監督者について結果の予見可能性を認めるためには、直接行為者の過失行為が予見可能であることが必要となります。しかし、偶然が重なって事故が起きてしまった場合に問われるのが過失犯だといえると思います。ここから分かるように、直接行為者は通常、適切に行為を行おうとしてたまたま過失行為をするに至っているので、結局のところ監督者が過失行為を予想することは難しいのです。これを踏まえて、監督者に直接行為者の過失行為について予見可能性を認めるためには、直接行為者が過失行為を行う兆候を認識しているかまたは予想できたといえる場合でなければならないといえます。例えば、普段からよくミスをしていたり、過労などその他の事情からミスが起こりやすい状況にある場合などが考えられますね。

次に②「管理過失」についてですが、これは結果を回避するための危機管理体制をきちんと構築していたかが問われることになります。危機管理体制の不備だけでは結果が生じるわけではありません。この問題は現に危険が潜在し、それが体制の不備ゆえに現実化した場合に問われることになります。そのため、危険が潜在することについての予見可能性が必要と考えられています。

以上のように、「過失犯」と一言で言っても、様々な問題がある。自動車を運転される方(自動車事故については別の法律が制定されていますが)や工事現場などで働いている方をはじめ、過失による事故というのは誰でも行為者あるいは被害者、いずれの立場になってもおかしくないと思います。自分はそんなミスしないとたかをくくって無茶をせず、常に危険と隣り合わせであることを忘れないようにすべきことを(自戒も込めて)申し上げて結びといたします

か。

 

さらに忘れてはならないのが、故意の方の犯罪の未遂を検討するということです。未遂犯と不能犯の論点もかかわりますが、不能犯を一般人の具体的危険として考えるならば、基本的に不能犯とはなりえないので、現住建造物放火罪の未遂が成立することになる

条文は刑法109条です。

(非現住建造物等放火)
第百九条 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、六月以上七年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

1項は現住性・現在性がなくなった建造物の場合で、他の要件は現住建造物等放火罪(刑法108条)と変わりません。

①放火②建造物③非現在性・非現住性④焼損⑤故意(人がいない建造物を放火するという認識・認容)

 

 

建造物等以外放火罪(刑法110条)の要件

条文は以下の通りです。

(建造物等以外放火)
百十条 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
2 前項の物が自己の所有に係るときは、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

これは建造物等以外=建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑以外のものに対して放火した場合の罪です。よくあるのは自動車ですね。

この場合の要件は以下のようになります。

①放火②建造物等以外の物③燃焼④公共の危険を生じさせたこと⑤故意

 

 

 

公共の危険

公共の危険が何かについては学説上対立がありますが、不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険と考えておけば大丈夫でしょう。延焼の危険に限られません。

また判断基準としては事後的に客観的に判断されます。もちろん考慮要素として行為時の危険感も含まれる

さらに、「よって」と言いう文言からわかるように、建造物等以外放火罪は一種の結果的加重犯です。そのため、公共の危険に対する認識は必要ない

事後強盗罪

(事後強盗)
第二百三十八条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
 
①窃盗
②財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために(目的)
③暴行又は脅迫
④窃盗の機会性という要件

事後強盗罪が成立すると「強盗として論ずる」ことになるので、強盗罪と同様に扱うこととなります。

 

上記の条文を読めば分かる通り、「窃盗が」となっている以上、
事後強盗罪の主体は窃盗犯である必要があります。

 

〇「窃盗」には窃盗既遂のみならず「窃盗未遂」も含む
 
これについては、判例「窃盗」には「窃盗未遂」も含む
事後強盗罪は窃盗が逮捕を免れるなどの目的のために暴行に及ぶことが多い点から設けられているところ、窃盗が未遂に終わった場合でも上記目的のために暴行にでることは多いので、窃盗未遂も含む
 

 

なので、「窃盗」には窃盗既遂のみならず「窃盗未遂」も含むというのが妥当

 

 

事後強盗罪は、一定の目的が要件として課されています

 

①財物を取り返されることを防ぐ
②逮捕を免れる
③罪証隠滅

 

のいずれかの目的が必要となります。

 

なお、これらの目的で暴行・脅迫がなされることが要求されているのみなので、上記の目的が達成されたか否かは事後強盗罪の成立に全く関係ありません

 

例えば、窃盗犯が自分を

逮捕しようと追ってきた者を逮捕を免れるために暴行したが結局逮捕された場合、事後強盗罪は成立することになるわけです。

居直り強盗と事後強盗罪の区別

 

目的要件との関係でよく試験で問題になるのが、居直り強盗との区別、というものです。

 

居直り強盗とは、一度財物を奪取した後で、さらに財物を奪取するために暴行・脅迫を行うような行為です。

 

このように、居直り強盗と事後強盗は、財物奪取の後でさらに暴行・脅迫を行う点で類似性を有するので、両者をいかなる基準により区別するかが問題となる
そもそも強盗罪では暴行・脅迫が要件とされています。

 

そして強盗罪における暴行・脅迫は財物奪取に向けられたものである必要がある

 

つまり、普通強盗罪は財物を奪取する手段として暴行・脅迫が用いられるが、事後強盗罪においてはすでに財物を取った後で暴行・脅迫を行うので、事後強盗では、普通の強盗罪のように財物奪取の手段として暴行・脅迫をすることはなく、むしろ取り返されることなどを防ぐために暴行・脅迫をするので、居直り強盗の場合は「財物奪取のために」暴行・脅迫に対して、事後強盗は上記①〜③のために暴行・脅迫をする
つまり、居直り強盗と事後強盗罪の区別は、暴行・脅迫の「目的」によって区別される

 

居直り強盗と事後強盗罪の区別、まとめ 
居直り強盗=財物奪取のために暴行・脅迫を行う
事後強盗罪=財物を取り返されることを防ぐ or 逮捕を免れる or 罪証隠滅のために暴行・脅迫を行う

 

 

事後強盗罪も普通の強盗罪と同様に「暴行又は脅迫」が要件とされる

 

事後強盗罪の暴行・脅迫の程度も普通の強盗罪と同じように「反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫」である必要がある

 

事後強盗罪も「強盗として論ずる」とされている以上、両者の均衡の観点から、強盗罪と同じように、「反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫」を必要とするべきとなっている
なので、試験で事後強盗罪が問題となった場合は、体格差、犯行時刻、犯行場所の状況、行為の態様、被侵害法益などを踏まえて、反抗を抑圧するものといえるかどうかをしっかり検討しなければなりません。

 

窃盗の機会性

事後強盗罪の要件として、条文上明らかな上記3要件の他に、暴行・脅迫が「窃盗の機会」になされることが要求されます。

 

これは、強盗罪においては、財物奪取のために暴行・脅迫を行うというように、暴行・脅迫と財物奪取が一連のものとして結びついています。

 

それに対して、事後強盗罪では窃盗の後に暴行・脅迫がなされるので、両者の間に時間的な隔たりがあるばいいもあるなど、普通の強盗罪ほど窃盗罪との結びつきが強くありません。

 

しかし、事後強盗罪も「強盗として論ずる」以上は、普通の強盗罪と同じほどの窃盗罪と暴行脅迫との関連性を要求するべきです。

 

ということで、事後強盗罪においては、暴行・脅迫が窃盗の機会になされることによって両者の結びつきが求められるということになるのです。

 

窃盗の機会の判断基準

 

 

窃盗の機会の判断基準

判例によると窃盗の機会性の判断基準は「被害者等から容易に発見され,財物を取り返され,逮捕されうる状況」(最決平14・2・14)が継続していたかどうか、そのための考慮要素が、①時間的場所的近接性 ②被害者等による追求の有無

例えば、窃盗の現場から数分後100mしか離れてなくしかも被害者に追われていた場合、①時間的場所的に近接し、②被害者等による追求もあるので、問題なく「窃盗の機会」といえる

 

でも、窃盗から数時間後に10キロ離れた場所でのんびりしていた場合は、①時間的場所的に近接していないし②被害者等による追求も全くないので、「被害者等から容易に発見され,財物を取り返され,逮捕されうる状況」ではないため、「窃盗の機会」ではないとなります。

 

なお、窃盗の機会が否定された場合は、窃盗罪(未遂罪)及び暴行罪等が成立することになる
事後強盗罪の既遂・未遂の区別については「窃盗の既遂・未遂」によって区別するということとされる。

 

なので、窃盗未遂犯が逮捕を免れるなどのために暴行・脅迫をした場合は事後強盗未遂罪が、窃盗既遂犯が逮捕を免れるために暴行・脅迫をした場合は事後強盗既遂罪が成立する強盗罪は最終的に窃盗が達成された場合に既遂が成立するため、事後強盗罪にも同様に窃盗罪の既遂・未遂によって区別する
事後強盗罪は財産犯的側面と生命身体侵害犯的側面があり、第一義的には前者得意解され、財産犯たる窃盗罪による区別の方が妥当と考えられるという理由もありえる。