【参考】裁判要旨(原文)
市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為は,当該保育所の利用関係が保護者の選択に基づき保育所及び保育の実施期間を定めて設定されるものであり,現に保育を受けている児童及びその保護者は当該保育所において保育の実施期間が満了するまでの間保育を受けることを期待し得る法的地位を有すること,同条例が,他に行政庁の処分を待つことなくその施行により当該保育所廃止の効果を発生させ,入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して,直接,上記法的地位を奪う結果を生じさせるものであることなど判示の事情の下では,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
差止訴訟は、行政事件訴訟法3条7項に規定が置かれている。(抗告訴訟)
3条7項「この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。」
処分をされてしまってからでは取り返しがつかない場合に
提起される訴訟、そのため実質的には処分等をされる前に提起する取消訴訟と言える
その審理においては、義務付け訴訟と類似の規定があり、
また、取消訴訟と同じく、当該「処分等の違法性」が本案審理の対象となる。
なお、判断の基準時は判決時と解される
(厳密には事実審の口頭弁論終結時)
処分がない段階で認められる訴訟であるから
出訴期間に関しては取消訴訟の規定(14条)が準用されない。
取消訴訟では、処分等や処分等を知った時を起算点に設定しているが、差止訴訟ではその性質上、同様の起算点が設定できない。
差止訴訟の認容判決によって、行政庁は一定の処分等をしてはならない旨命じられる。
そして差止訴訟の判決には、拘束力の規定(33条)が準用されるが、
第三者効の規定(32条1項)に関しては準用されていない。
そこで、判決内容は既判力によって当事者は拘束するが、第三者には効力が及ばない。
「廃棄物処理場の許可」を例にすると
すでに許可を受けた者がいて、
住民がその許可の取消しを求める場合、
許可取消の効果が処理場の許可を受けた者(訴訟における第三者)にも及ばなければ意味がない。
しかしその者自身は訴訟の当事者ではないため、第三者効を認める必要がある。
一方、差止訴訟を提起する段階ではまだ当該許可はされておらず、第三者に効果を認めなくても原告は目的を達成できる。
なお、義務付け訴訟も同様に判決に第三者効が認められていないが、これは取消訴訟等と併合提起する必要があるため、わざわざ単独で第三者効を認める必要性がないという理由がある。