譲渡担保とは?
譲渡担保とは、債務者が所有する物(動産や不動産)を
債権者に移転する担保
債権者が債務者の所有権や財産を一時的に担保として設定し
弁済された時は債務者に所有権や財産を戻し、
債務不履行の時は所有権や財産を債権者に譲渡する仕組みです。
所有権の移転が可能であれば、どんな物でも譲渡担保の対象になり得る
物的担保とは?
物的担保は法的に担保物権と呼び、
債権回収の確実化のために提供されているものを指す。
譲渡担保も物的担保の一つです。
物的担保は法定担保物権と約定担保物権の2種類にわけられますので、どのようなものがあるのか簡単に見ていきましょう。
物的担保 | |
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法定担保物権 | 政策的な必要性から一定の事情がある際に法律上当然に成立する担保物権 |
約定担保物権 | 債務者の信用を創出するために当事者の合意で設定される担保物権 |
※民法第二編には規定されていない約定担保物権は変則担保とも呼ばれています。
法定担保物権の種類
法律上当然に成立する法定担保物権は次の2種類
法定担保物権の種類 | |
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留置権 | 債権の弁済を受けるまで手元に留めておける権利 |
先取特権 | 法律上当然に優先的に弁済を受ける権利 |
約定担保物権の種類
法定担保物権とは違い、約定担保物権は次の4種類で構成されています。
約定担保物権の種類 | |
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質権 | 物品や権利書の債務の返済がされるまで占有し、債務不履行で優先的に弁済を受けられる権利 |
抵当権 | 土地と建物に金融機関が設定する権利 |
譲渡担保 | 債務者が所有する物(動産や不動産)を債権者に移転する方式の担保 |
仮登記担保 | 金銭債権を返済できない際に物を債権者に売却することを債務者と約束して仮登記する担保 |
宅建と最も関わりがあるのは、住宅ローンの手続きと関連する抵当権です。
譲渡担保の性質
譲渡担保の性質は「お金では弁済できない、だけど債権や動産は持っている」という場合に、当事者の間で担保を譲渡する形になります。
債務者は約束の日までに担保とした債権を弁済すれば良い制度です。
民法上で譲渡担保に関する明確な決まりはなく、判例や実務上慣習的に認められています。
譲渡担保の目的物と対抗要件
譲渡担保を設定した場合は契約書を作成するだけではなく、担保を設定した事実を第三者にわかる形で記録する対抗要件が必須です。
具体的に対抗要件は、「担保に取った債権の債務者に内容証明郵便を送る」「債権譲渡登記をする」という2種類の方法で取得します。
動産の場合
譲渡担保の代表的な目的物は動産で、車や時計など不動産以外の物を指します。
民法86条では、「不動産以外のものは、すべて動産とする」と定義付けされていました。
抵当権では限られた担保しか設定できませんが、譲渡担保なら所有権の移転が可能なら何でも対象になる
ここでいう引き渡しとは、目的物の占有者が手元に置いたまま占有を他者に移す占有改定(民法183条)で行われます。
不動産の場合
マンションや戸建てなどの不動産は、質権や抵当権でも譲渡担保の目的物に設定OK!
ただし、質権や抵当権を実行するに当たり、民事執行法に則って時間のかかる手続きを取らないといけません。
不動産の場合の対抗要件は、所有権の移転登記になります。
所有権の移転登記が対抗要件になる点は他の担保も同じです。
債権・財産権の場合
譲渡担保では譲渡できるかが条件で、売掛金などの債権や著作権などの知的財産権も目的物として設定できます。
「なお、動産、有価証券、債権、不動産、無体財産権等のほか、法律上まだ権利と認められていないものであっても、譲渡できるもの(手形を除く。法附則第5条第4項)は、すべて譲渡担保の目的物とすることができる」
債権や財産権の対抗要件は、「第三者に通知をする」「第三者から承諾を得る」「登記をする」といった方法があります。
譲渡担保設定の具体例
譲渡担保は様々な取引の場面で活用できます。
- メーカーが卸売業者に製品を納品して卸売業者が小売業者に転売しているケースで譲渡担保を活用すれば、卸売業者が代金の不払いを起こしても売買代金債権を自社で回収できる
- 下請業者が元請業者の工事代金債権を譲渡担保に取れば、元請業者が代金の不払いを起こした時に発注者に対して保有している工事代金債権を自社で回収できる
どちらにしても、取引先(債務者)による支払いが遅れても代金に充てることができます。
譲渡担保を設定するメリット
譲渡担保を設定するに当たり、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
- 取引先(債務者)からの支払いが遅れた際に、催促しなくても債権や動産を直接回収できる
- 万が一取引先が破産しても、担保を取っていた債権や動産から支払いを受けられる
債務者の立場になって考えてみると、譲渡担保はお金を借りて返せなくなった時の身代わりのような存在ですね。
「不動産だけではなく動産でも同じような担保設定ができないか?」というニーズから譲渡担保が登場しました。
譲渡担保を設定する際の注意点
- 担保に取る債権がどれかを明確に契約書で特定しないと無効になって回収できない
- 債務者が担保物を第三者に譲渡したり重ねての担保設定をしたりするリスクがある
- 債務者の他の債権者が設定した担保物を差し押さえする恐れがある
- 担保物の滅失や破損によって担保としての機能が低下することがある
譲渡担保では債務者が占有を続けるパターンが多いため、様々な問題が生じると心得ておかないといけません。
譲渡担保の設定手続きの流れ
譲渡担保の設定手続きの流れは次の4つのステップです。
- 最初にどの債権や動産を担保に取るのか決める(取引先の協力が得られるかの確認が必要)
- 担保物をできる限り特定して債権譲渡担保設定契約書を作成する
- 債務者に内容証明郵便を送ったり債権譲渡登記の手続きをしたりする
- 取引先の支払いが遅れた時は処分清算型・帰属清算型のいずれかの方法で担保を実行する
もし担保を実行して債務者の債務額より担保物の価値が高い場合、差額を清算して債務者に支払う形になります。
譲渡担保に関する判例を分かりやすく解説!
- 判事事項:譲渡担保権者(債権者)が譲渡担保で保証された債権が弁済期後に、対象物の不動産を第三者に譲渡した場合に取り戻せるのか
- 裁判要旨:譲渡担保権者が被担保債権の弁済期後に目的不動産を譲渡した場合、背信的悪意者に当たる時と否とで関わらず債務を弁済して目的不動産を受け戻せない
不動産を取り戻すことができないと考えないと、権利関係の確定しない状態が続く