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訴訟要件

  1. 処分性(3条2項)
  2. 出訴期間(14条)
  3. 原告適格(9条1項)
  4. 被告適格(11条1項)
  5. 訴えの利益(9条1項)
  6. 不服申し立て前置
  7. 裁判管轄(12条)

法律上の争訟

  1. 行政権限間→内部の問題=争訟性なし
  2. 財産権の主体としてなら可
    1. 宝塚パチンコ条例事件(平成14年7月9日)
      公益目的≠個人の利益保護→争訟性否定
      ※批判あり:行政代執行できないものなら可とすべき
    2. 公害防止協定事件(平成21年7月10日)
      公益目的の契約履行で民訴認める

処分性

定義

「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが、法律上認められているもの」

最判昭和39年10月29日(ごみ焼却場設置計画議決無効事件)
該当しない場合
  1. 行政指導
    1. 事実行為:処分性なし
    2. 病院開設中止勧告事件(最判平成17年7月15日)
      1. 後続の不利益処分が相当程度確実
      2. 事後救済に実効性なし
  2. 条例(法規命令)
    1. 一般規範:処分性なし
    2. 横浜市保育所廃止条例事件(最判平成21年11月26日)
      1. 「限られた特定の者らに対して、直接」法効果を生じる
      2. 取消によることの合理性=第三者効(絶対的効力説)
  3. 職務命令
    1. 内部の命令:処分性なし
    2. 懲戒処分予防のための義務不存在確認→無名抗告訴訟or差止
      ※事後救済の困難性必要
    3. 被処分による不利益の予防目的→当事者訴訟

出訴期間

違法性の承継
  1. 先行処分:出訴期間経過=違法主張不可
  2. 後行処分に違法性承継されないか
    1. 一体として一個の法効果を発生させる目的
    2. 先行行為について手続的保障が不十分

原告適格

「行訴法9条は、取消訴訟原告適格について規定するが、同条1項にいう当該処分の取消を求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益にあたり、当該処分によりこれを侵害又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有する」

最判平成17年12月7日(小田急事件)
三者原告適格
  1. 「法律上の利益を有する者」(9条1項)
    1. 小田急事件判決
    2. 9条2項
  2. 検討
    1. 原告の利益→具体的に特定
    2. 根拠法令の考慮利益該当性
      1. 文言
      2. 趣旨・目的
      3. 関連法規
    3. 個別的利益としての保護の有無
      1. 利益の内容・性質
      2. 侵害の程度・態様
        ※特定、重大、近接なら認めやすい
  3. 主張制限(10条1項)
    1. 相手方:専ら他の者の利益保護を目的とするもの以外
    2. 三者:保護規定についての主張のみ認める(9条2項と同じ)

訴えの利益(狭義)

  1. 訴えの利益(9条1項)=救済可能性
  2. 判断基準
    1. 処分の法効果が残存しているか
    2. 取消の法効果として回復する利益があるか(9条1項但書)
      例)給与債権

※事実上の原状回復可能性は事情判決の問題

不服申立て前置(審査請求前置)

  1. 出訴期間:60日以内→決済から6か月以内
  2. 順序
    1. 審査請求中心主義:原則(∵実効性)
    2. 異議申立前置主義
      1. 上級行政庁なし
      2. 個別に法定
    3. 自由選択主義:不作為(∵促進)
  3. 原処分主義:取消は原処分に対して行う(10条2項)
    ※裁決による変更=元々その内容の原処分があったとする(昭和62年4月21日)

仮の救済

執行停止(25条)
  1. 対象選択(聞かれなくても特定しておく)
    1. 処分の執行
    2. 手続の続行
      ↓(できなければ)
    3. 処分の効力
  2. 要件
    1. 「重大な損害」
      1. 回復困難→重大性あり
      2. 困難でない→損害の性質・程度、処分の内容・性質を考慮
    2. 「緊急の必要」
    3. 「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ」がない
    4. 「本案について理由がない」といえない
  3. 手続
    1. 取消訴訟併合提起
    2. 被告適格
    3. 管轄裁判所
義務付けの訴え(37条の2、37条の3)
  1. 非申請型(37条の2)
    1. 「重大な損害」:考慮要素は執行停止と同じ
    2. 「他に適当な方法がない」:特別の救済手段の規定がないこと
    3. 「法律上の利益」:9条2項と同じ
    4. 処分すべきことが明白orしないことが裁量濫用
  2. 申請型(37条の3)
    1. 取消訴訟併合提起
    2. 取消訴訟に理由あり:法令違反→裁量違反
    3. 処分すべきことが明白orしないことが裁量濫用
差止め(37条の4)
仮の義務付け・仮の差止め(37条の5)
「償うことのできない損害」
文言の厳格性及び事前の救済手段という性質から、事後的な救済による回復困難性をより厳格に判断する。
「金銭賠償によることが不可能であるか、又は社会通念上著しく不相当な損害」

法主

通常審査(判断代置)

  1. 権限の違法
    1. <根拠規定>によれば、<処分内容>をする権限はAにある。
    2. 本件処分はBが行っており、無権限者による処分として違法である。
  2. 形式の違法
    1. <根拠規定>によれば、<処分内容>は~によってしなければならない。
    2. 本件では、これをしておらず、処分はされていなかったことになる。
  3. 理由不備(手続の違法)
    1. 行手法8条1項の趣旨は、①「判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに」②申請者の「不服申立てに便宜を与える」点にある。
    2. よって、理由には<根拠規定>の適用の基礎となった事実関係を具体的に記載しなければならない。
    3. 上記趣旨に鑑みれば、事後的な追完は許されないが、差替えは許される。
  4. 法令解釈の違法
    1. <処分内容>は<根拠規定>について~との見解の下になされたものである。
    2. しかし、~であるから、<根拠規定>は~という趣旨と解すべきである。
    3. とすると、<処分内容>はかかる<根拠規定>の趣旨に反し、違法である。

裁量統制

裁量の存否
  1. <根拠規定>は、要件or効果について、
    1. ~条に~という基準を定めている。
    2. 具体的な基準は何ら定めていない。
  2. かかる判断については、
    1. ~であることを要し、これは経験則等に基づいて判断できる。
    2. ①、②、③などの諸要素を総合考慮した、専門技術的判断を要する。
  3. よって、
    1. その判断が行政庁の裁量に属するものとは解されない。
    2. 法は行政庁に一定の裁量を認めたものと解する。
  4. そこで、
    1. ~であるか否かを判断する。→通常審査へ
    2. かかる裁量判断が、裁量権の逸脱・濫用として違法とならないか検討する。
裁量濫用論
  1. 上記のように行政庁の裁量が認められる判断については、…という場合に限り、裁量権を逸脱・濫用したものとして違法となると解する。
    1. (重要な)事実の基礎を欠く
    2. 社会観念上著しく妥当を欠く
    3. 事実に対する評価が明らかに合理性を欠く
    4. 考慮すべき事情を考慮せず、考慮すべきでない事情を考慮している
  2. 本件では、…ため、裁量権の逸脱・濫用が認められる。
    1. ~という判断過程における考慮不尽の瑕疵がある
    2. ~という目的・事情に比して処分が重きに失する

損失補償・国家賠償

国家賠償法1条

  1. 「公権力の行使」
    国賠法2条と私経済作用を除くすべての活動(広義説)
    →問題となる行為の特定・あてはめ
  2. 「公務員」
    1. 公権力の行使者(≠公務員法上の公務員)
    2. 該当性
      1. 本来行政の事務
      2. 権限の委譲による行為
  3. 賠償請求の相手方
    1. 国家賠償:行政のみ(∵代位責任)
    2. 債務不履行安全配慮義務):施設設置者たる行政

権力の不行使の違法

  1. 行使すべき権限の特定
    1. 法規→裁量の有無
    2. 行政指導・公表
  2. 法令解釈
    1. 保護法益
    2. 適時適切行使義務←裁量を与えた趣旨
  3. 具体的事実
    1. 権限行使要件の充足(認識)
    2. 行使義務(要件充足+重大性)
    3. 因果関係・有責性
論証例

 

 

  1. ~条の~する権限は、~であるから、裁量に委ねられる。よって、権限の不行使が即違法とはいえない。
  2. しかし、「権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく不合理と認められるときは、国家賠償法1条の違法にあたる」と解すべきである。
  3. 権限不行使の合理性判断においては、①被侵害法益の性質・程度、②予見可能性、③結果回避可能性、④当該権限の行使による解決の適切性を総合考慮する。
  4. ~という保護法益に鑑みると、法は当該権限について適時適切に行使することを要求する趣旨と解される。そして、①<法益>は重大である。また、②~という事情が認識されていたから<予見可能性>があったといえる。③~の時点で~していれば損害を軽減できたから<結果回避可能性>も認められ、④~であるから<処分>以外に確実な防止策はなく、権限行使が適切であったといえる。
  5. 以上より、Yの権限不行使は国家賠償法1条の違法にあたる。

 

※他の要件(「公務員」「職務」「故意・過失」「損害」「因果関係」)も検討!

 

国家賠償法2条

  1. 「営造物」
    「国又は公共団体により直接に公の目的に供されている有体物」
  2. 設置管理の瑕疵
    1. 瑕疵=「通常有すべき安全性を欠いていること
    2. 判断方法
      「当該営造物の構造・用法・場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して個別具体的に判断すべき」
      1. 物理的欠陥
      2. 危険の蓋然性・重大性
      3. 回避措置の必要性・有効性・普及度・費用
    3. 供用関連瑕疵
      「内在的瑕疵がない場合でも、一定の限度をこえる利用によって第三者に危害を生じる場合には、瑕疵があると解すべき」
      1. 社会的受忍限度
      2. 被害の範囲・程度
      3. 公益の要請
      4. 経緯・防止措置の状況
      5. 彼此相補の関係

損失補償

  1. 憲法29条3項
    1. 直接可
    2. 各法律
      1. 手続あり:形式的当事者訴訟
      2. 手続なし:実質的当事者訴訟
  2. 補償要件=29条3項の解釈
    1. 形式的基準:特定の者に対し
    2. 実質的基準:財産権の本質を害するような侵害
  3. 内容
    1. 完全補償vs相当補償→説明の違いでしかない(いずれにしろ原則は完全)
    2. 合理的理由があれば市価自体でなくてもいい
    3. 精神的価値、生活再建費用、文化的価値は含めない

住民訴訟

  1. 監査請求前置
    1. 対象となる財務会計行為の特定
    2. 期間:1年+合理的理由
    3. 責任者:専決では専決権者が一次責任→専決権者
  2. 訴訟(地方自治法242条の2)
    1. 1号:差止
    2. 2号:処分の取消
    3. 3号:怠る事実の違法確認請求
    4. 4号:賠償請求命令
      1. 長を被告とし、責任者個人への賠償を求める
      2. 一次責任者・監督責任者の両方
  3. 先行の非財務会計行為に違法がある場合
    1. 原則:従う義務→財務会計行為は適法
    2. 例外:財務会計法規上の義務違反になる場合は違法
      1. 先行の違法行為が直接の原因・目的となっている
      2. 「著しく合理性を欠き適正な予算執行の観点から看過しがたい瑕疵がある」
  4. 過失:会計職員等は軽過失免責
  5. 債権放棄の決議
    1. 原則:裁量行為
    2. 住民訴訟の趣旨に鑑み不合理で裁量濫用にあたるか

処分性

処分内容 処分性の有無 判断理由
土地区画整理事業計画決定 換地処分を受ける地位≠一般的・抽象的
用途地域の指定 × 一般的・抽象的→建築確認で争うべき
2項道路指定 土地に対する具体的な私権制限
水道料金を定める条例 × 一般的・抽象的・不特定多数人
開発許可要件としての同意 × 不同意≠開発の禁止・制限効果
労災就学援護費不支給決定 支給請求権の存否確定
海難原因解明裁決 × 原因解明≠過失確定効
輸入禁制品該当通知 最終的な拒否判断の表明=実質的拒否処分の機能
病院開設中止勧告 事後の不利益処分が相当程度確実+救済の実効性
登録免許税還付通知拒絶通知 簡易手続を利用しうる地位の否定
反則金の通告 × 通告≠納付義務

原告適格

処分内容 原告適格の有無 保護法益
定期航空運送事業免許 ○近隣住民 騒音
原子炉設置許可 ○周辺住民(29~58km) 事故災害
特急料金認可 ×個別利用者 個別利用権:保護せず
史跡指定解除 ×研究者 文化財享有権:公益に解消
風俗営業許可 ×該当地域住民 風俗環境保全:公益に解消
林地開発許可 ○近隣住民
×地権者・営農者
災害
財産権:保護せず
総合設計許可 ○近隣住民 倒壊・炎上
都市計画事業認可 ○近隣住民 騒音・振動
場外車券場設置許可 ×近隣住民
○医院開設者(○200m ×800m)
生活環境:保護せず
健全な環境での医療業務

訴えの利益

処分内容 問題となった事情 利益の有無 判断理由
更正処分 再更正処分 × 更正処分は取り消されている
放送免許拒否 他者への免許 競願関係→必然的に全体でやり直し
運転免許停止 期間経過 × 法的効果消滅
保安林指定解除 防災用代替施設設置 × 危険消滅=救済すべき不利益なし
建築確認 工事完了 × 確認=工事の適法化≠事後処分の前提
土地改良事業認可 換地完了 原状回復の可否は裁量棄却(31条)の問題
再入国不許可 出国 × 再許可の基礎となる現在留資格消滅
換地処分無効確認 給付訴訟可 照応原則→土地取戻は求めていない
原子炉設置許可無効確認 民事差止可 紛争の抜本的解決→直截かつ適切

令和2年司法試験論文行政法

 

 

 

第1 設問1(1)

1 抗告訴訟の対象となる処分のうち,「行政庁の処分」(行訴法(以下法律名略)32項)公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち(公権力性),

②その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが(法効果の直接性・具体性)

法律上認められているもの(法律の根拠)をいう[3]

2 本件計画についての具体的検討

(1) 本件計画の法的性格

 本件計画のような農業地区域を定める計画(農振法8条1項)は,同法2条の基本原則に照らし,農業地域の保全・形成や農業に関する公共投資その他農業振興に関する施策を計画的に推進するものであるから,その法的性格は,講学上の行政計画といえる。また,農業地区域を定める計画の変更(同法13条1項)等がなされない限り,農地の転用が認められないことから,同計画は,都市計画法上の用途地域と同じく,同計画にかかる地域・地区内の土地所有者等に建築基準法上の新たな制約を課す法定の完結型計画の一種といえる。ゆえに,一定の法状態の変動は生じるが,本件計画の効果も,用途地域指定についての昭和57年判決の場合と同様に,その効果はあたかも新たに制約を課する法令が制定された場合と同様不特定多数の者に対する一般的抽象的な効果にすぎないといえる。

 確かに,用途地域内では特に開発行為による土地の区画形質の変更が規制されるのに対し,農地の転用では「農地を農地以外のもの」にすることが禁止されており(農地法4条6項1号),区画形質の変更を伴わない行為まで一般的に禁止しており(農振法15条の2参照),規制の程度が強いため,昭和57年判例の射程は及ばないようにもみえる。しかし,用途地域指定に関しては例外的に建築基準法上の建築制限を緩和ないし解除する許可制度が設けられており[7],本件計画にも農用地区域内の土地を農用地区域から例外的に除外する制度がある(同法13条2項)。つまり,土地所有者等の権利制限の一部解除を求める権利を留保した行政計画である点で共通するから,昭和57年判例の射程が及び,本件計画の設定(本件計画自体)の処分性は認められない。

(2) 個別の農地を農業用区域から除外する計画変更の処分性

 次に,本件農地のような個別の農地を農業用区域から除外する計画変更は,上記(1)の個々の土地所有者等の権利制限の一部を解除するものといえるから,同計画変更の法効果の直接性・具体性があるといえる。

 また,同計画変更は,私法上の対等当事者間においてはあり得ない行為であるから[9],公権力性(上記1①)も認めらえる。さらに,農振法13条1項・2項により法律の根拠(上記1③)も認められる。

したがって,同計画変更の処分性は認められる。

(3) 本件計画変更の申出の拒絶の処分性

ア 法効果の直接性・具体性

 本件計画変更の処分性は認められるとしても,農振法15条1項・2項が「申請」と明記するのに対し,本件計画変更の申出については,「除外」(同法13条2項)の「申請」権を法令上規定していない。また,同申出の拒絶に対する審査請求等の行政不服審査に関する規定もない。さらに,本件運用指針は講学上の法規命令ではなく行政規則にすぎない。そのため,同拒絶の処分性は認められず,職権による計画変更が前提とされているとのB市の反論が想定される。

 しかし,不服申立てではないが,勧告・調停という一定の手続が法定されている(同法14条1項・2項,15条1項・2項)。また,本件運用指針4条1~4項により,計画変更の申出とそれに対する可否の通知の手続が定められており,諮問機関の意見を求め(同条2項),県(国)との事前協議を行う(同条3項)という慎重な手続によることとされ,B市は信義則あるいは平等原則の見地から同手続に自己拘束されることから,この手続は確立した実務上の手続となっている。そのため,B市は,農地転用許可申請に対する不許可処分の前の段階で,同条4項の「通知」すなわち申出の拒絶をもって,同不許可処分の処分要件に関する最終決定を前倒しして行うことになる。すると,この中間的措置とはいえない最終決定としての申出の拒絶は,実質的には,除外(同法13条2項)の申請に対する拒否処分(不許可処分)として機能しているといえ,あるいは特段の事情のない限り,後の農地転用許可申請をしても不許可処分を受ける法的地位に立たされることになる。

 また,見込みのない農地転用許可申請を行い,不許可処分を待って同処分に対する取消訴訟を提起して本件計画に不変更の違法性を争う方法も考えられ,加えて,本件計画には他の多くの利害関係人の利益を害することは少ないから,浜松市土地区画整理事業計画事件大法廷判決の場合とは異なり事情判決行訴法31条1項)がされる可能性は低いため,除外の申請権を認めうるための紛争の成熟性はないというB市の反論が想定される[12]

 しかし,同判決は非完結型計画の事案であるから,本件にはその射程が及ばない。また,申出の拒絶の処分性の認否は微妙な問題であるため同訴訟では違法性の承継も争点となりうること[13]に加え,同訴訟で争わせることは農地転用許可がなされないことによる損害を相当期間にわたり原告に負わせることになり,農地転用許可後に行う予定であった事業自体を断念させる結果をも生じさせかねないことに照らせば,実効的な権利救済を図る見地から,除外の申請権を認めるための紛争の成熟性はあるというべきである。

 以上のことから,農振法13条2項は「除外」につき,農地所有者等の「申請」(行政手続法2条3号)権を認める趣旨に出たものと解され,本件運用指針は農振法13条2項の趣旨を具体化したものと解される。ゆえに、申出の拒絶は、申請に対する拒否処分であるといえ、法効果の直接性・具体性(上記1②)が認められる。(

イ また,農振法13条2項により法律の根拠(上記1③)も認められ,さらに,計画変更の場合と同様に,申出の拒絶についても公権力性(上記1①)が認められる。

 よって,申出の拒絶の処分性は認められる。 以上より,本件計画の変更及びその申出の拒絶は,抗告訴訟の対象となる処分に該当すると考える。

 

第2 設問1(2)

1 Xの置かれている状態,B市の対応の法的な意味

 Xは,申出書等の申請書類を所定の方法でB市の関係課に物理的に[15]提出し(本件運用指針4条1項),かかる申請書類はB市長の事務所に「到達」(行政手続法7条)したといえる。にもかかわらず,B市職員が同書類を返送するなどの対応をしているが,この行為は申請書類の不受理あるいは返戻にあたる。

 そのため,Xとしては,相当の期間申請書類の審査が開始されない状態に置かれているが,上記不受理・返戻の対応は,受理概念を否定し,法律による行政の原理の当然の要請として[16]申請の到達により審査義務が発生することを明確にした同法7条[17]に違反する行為である。

2 提起すべき抗告訴訟不作為の違法確認訴訟

 以上のとおり,本問では,B市長が,Xの法令に基づく申請に対し,相当の期間内に何らかの処分をすべきであるにかかわらず,これをしないことから,不作為の違法確認の訴え行訴法3条5項)を提起すべきである。[18]

3 訴訟要件の充足性

(1) 不作為の違法確認訴訟の訴訟要件は,①原告適格(「法令に基づく申請」(同法3条5項,申請権)・「申請をした者」(同法37条)),②狭義の訴えの利益,③被告適格(同法38条1項,11条)及び④管轄(同法12条)である[19]

(2) ①については,前記第1の2(3)のとおり,本件計画変更の申出について「除外」(農振法13条2項)の申請権が同法に基づき認められるものといえ,また,本件申出書等の申請書類は令和元年5月8日か,遅くとも令和元年5月10日までに到達しているから(上記1),Xは現実に申請をした者といえ,原告適格が認められるといえる。

 ②については,本問に行政庁の不作為状態が継続しており,これが解消されるなどの事情はない[20]ことから,狭義の訴えの利益が認められる。

 ③・④についても,特に問題はなく満たす。

(3) よって,同訴訟の訴訟要件を充足するといえる。

4 本案においてすべき主張

(1) 不作為の違法確認訴訟の本案勝訴要件は,「相当の期間」(行訴法3条5項)の経過である[21]。同期間経過の有無については,通常の所要期間を経過した場合には原則として違法となるが,同期間経過を正当とする特段の事情がある場合には違法とはならないという基準で判断すべきである。[22]

(2) 本問では,通常の所要期間に関し,法定の期間はないが,標準処理期間(行政手続法6条)も1年程度と考えられ,また,Xと同時期に申出をした他の農地所有者らに対しては,すでに「先月中」すなわち令和2年4月中[23]に通知(本件運用指針4条4項)がなされていることから,平均的な審理(審査)期間[24]も1年程度と考えられる。そうすると,同年5月13日の時点では,Xの申請(前記3(2)のとおり遅くとも令和元年5月10日までに行っている。)から1年を経過しているから,通常の所要期間を経過したといえる。

 また,上記特段の事情があるというB市の反論が想定されるが,Xは申出をやめる意思がない旨を文書で明確にB市職員に伝えているため,本問ではB市職員の行政指導により円満な解決が見込まれるという事情[25]はなく,申請者が急に激増したという事情[26]もないから,上記特段の事情はない

(3) よって,「相当の期間」は経過しているから,Xの申請に対するB市長の不作為は違法である。

 

第3 設問2

1 農振法「10条3項2号に掲げる土地」(同法13条2項5号)に該当しないとの違法事由

(1) 「当該土地に係る土地が〔農振法〕第10条第3項第2号に掲げる土地に該当する場合」(同法13条2項5号)といえるためには,同法10条3項2号委任する同法施行規則4条の3所定の要件を満たす必要がある。そのため,諸般の客観的な事情からみて[27],「除外」(同法13条2項5号)に係る土地が①「主として農地用の災害を防止することを目的とするものその他の農業の生産性を向上することを直接の目的としないもの」(同法施行規則4条の3第1号括弧書き)あるいは②土地改良事業の施行により農業の生産性の向上が相当程度図られると見込まれない土地」(同法施行規則4条の3第1号イ括弧書き)に当たる場合には,同法10条3項2号に掲げる土地に該当する場合(同法13条2項5号)には当たらない。

(2) Xによると,①´本件事業の主たる目的は,農地の冠水防止にあり,また,②´本件事業によって関係する農地の生産性が向上するとは考えにくく,特に本件農地は高台にあるため,本件事業によって生産性が向上することは考えられない。ゆえに,これらの客観的な事情からみて,除外に係る土地は上記①,②のいずれにも該当するものといえる。

(3) したがって,本件農地は,同法10条3項2号に掲げる土地に該当する場合(同法13条2項5号)には当たらないから,本件農地については同号の要件を充足する。にもかかわらず,同号の要件を満たさないとするB市による同号に係る要件の認定は,同号に違反し違法である[28]

2 農振法施行令9条所定の期間制限が一律に適用されない旨の違法事由

(1) 次に,本件農地が同法10条3項2号に掲げる土地に該当する場合(同法13条2項5号)は当たるものとされるとしても,同法施行令9条所定の期間制限が本件農地にも一律に適用されることは違法である旨の主張が考えられる。

 この点に関し,土地改良事業との関係で農用地区域からの除外を制限している農振法13条2項5号同法施行令9条趣旨・目的は,(ⅰ)同事業によって農業の生産性の向上(同法施行規則4条の3第1号イ括弧書き参照)を図りつつ,他方で,(ⅱ)転用行為に係る利益すなわち「農用地以外の用途に供する」(同法13条2項柱書き)ことないし「他の利用」(同法2条)に係る土地所有者等の利益との合理的調整を図ったものと解される[29]

 そこで,同法施行令9条にいう「事業の工事が完了」については,上記趣旨・目的に適合する限り,事業全体の工事の完了時期ではなく除外に係る農地に関連する事業の一部分の工事の完了時期をいうものと解すべきである。あるいは,8年という期間制限が一律に適用されると解することは,上記趣旨・目的に反し,施行令9条自体が違法無効となると解されることから,施行令9条自体が適法有効であると認められるには,期間制限が一律に適用されない例外を認めるという限定解釈を施すべきである[30]。具体的には,(ⅰ´)実質的にみて,特定の農地を農用地区域外から除外しても農業の生産性の向上の点で具体的な支障がなく,かつ(ⅱ´)転用行為に関し著しい不利益を与える場合には,「事業の工事が完了」の文言を上記のとおり解釈するか,あるいは農振法施行令9条所定の期間制限が適用されないものと考えるべきである。

(2) 本問では,(ⅰ´)本件農地と関連する上流部分については,平成20年末頃には用排水施設の補修・改修の工事が終了しており,本件事業全体の工事の完了平成30年12月となった理由は,事業の計画変更によって工事が中断されたからである。また,前記第3の1の事実関係より,本件農地を除外しても本件事業による農業の生産性の向上の点で具体的な支障はない。

 また,(ⅱ´)本件農地の転用が認められないとXの長男の医院を本件農地上に開設できず,平成30年度の翌年度から8年の経過が必要とされると,事実上B市の地域に同医院を開設することを事実上断念させることとなりかねないことから,Xらに著しい経済的不利益を与えることになる。

(3) よって,上記趣旨・目的に適合する法令の解釈適用から、

本件農地は同法施行令9条所定の期間制限にかからないか,あるいは同期間制限が適用されない農地であるから,同期間制限が適用されるとするB市の要件認定は,同法13条2項5号に違反し違法である[31]。 

                  

刑事訴訟法

  • 百選40事件(起訴状における余事記載)
  • 起訴状の余事記載について
    現行法は、起訴状には、裁判官に予断を生ぜしめるおそれのある書類
  • その他の物を添付し、内容を引用してはならない(刑訴法256条6項)
  • として、起訴状一本主義を採用している。そこで本問の起訴状の記載がかかる起訴状一本主義に反するのではないか。
    法が起訴状一本主義を採用したのは、
  •  
  • わが国が当事者主義的訴訟構造(298条1項、312条1項)をとり、
  •  
  • かかる当事者主義を実効化し、また予断を排除することによって「公平な裁判所」(憲法37条1項)の実現を図るためである。
  •  
  •  
  • しかし一方で、法は裁判所に対して審判対象を明確化し、
  •  
  • 被告人に対して防御の機会を保障するため、
  •  
  • 起訴状において訴因を明示すること、
  •  
  • つまり訴因の特定を要求している(256条3項)。
  •  
  •  
  • 本問のように名誉毀損記事の全文を引用することは
  •  
  • 特定の要請には資することになることから、
  •  
  • 起訴状一本主義の原則と訴因特定の原則とが矛盾するのではないか。
  •  
  •  
  • 両者の関係が問題となる。
    この点、起訴状の記載は一方当事者である検察官の主張であるから、
  •  
  • 何を書いてもよいはずである。
  •  
  • 256条6項は書類、その他の物の添付、引用を禁止しているのであって余事記載..
  • 百選52事件(必要的弁護)
  • 弁護人がいなければ開廷することができない刑事訴訟法289条1項、316条の29、350条の9)。 このような必要的弁護事件については、既に私選弁護人が選任されている場合を除き、裁判所は国選弁護人を選任しなければならない(同法36条)。
  •  
  • 百選54事件(公判前整理手続における証拠開示)
  • 公判前整理手続きに付されている事件の場合は、 請求予定の証拠の開示は検察官主導 で行われます。 しかし、そうでない 通常の刑事事件の場合 は、証拠開示は、請求予定のものであれ、 検察官の任意で開示 されます。 基本的に検察官も開示してくれますが、 弁護人が問い合わせなければ開示の手続きに入りません。 上記のように 弁護人主導で手続きを進めることもあり、公判請求され次第、検察官に対し、開示を求める必要があります
  • 百選55事件(刑訴法316条の17と自己に不利益な供述の強要)

刑訴法316条の17と自己に不利益な供述の強要 

<事案>
革労協関係者である被告人らが、威力業務妨害と、地裁所長から庁舎敷地外への

退去命令を受けたのに退去しなかったという建造物不退去の事案において、

第1審裁判所が事件を公判前整理手続に付したところ、

公判前整理手続において被告人に主張明示義務及び証拠調べ請求義務を

課している刑訴法316条の17が、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と

定める憲法38条1項に違反する旨主張された上告事件についての最高裁決定。 

<規定>
憲法 第38条〔不利益な供述の強要禁止、自白の証拠能力〕
何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
②強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
③何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

刑訴法 第311条〔被告人の黙秘権・供述拒否権、被告人質問〕
被告人は、終始沈黙し、又は個々の質問に対し、供述を拒むことができる。
②被告人が任意に供述をする場合には、裁判長は、何時でも必要とする事項につき被告人の供述を求めることができる。
③陪席の裁判官、検察官、弁護人、共同被告人又はその弁護人は、裁判長に告げて、前項の供述を求めることができる。

刑訴法 第316条の17〔被告人・弁護人の主張明示〕
被告人又は弁護人は、第三百十六条の十三第一項の書面の送付を受け、かつ、第三百十六条の十四及び第三百十六条の十五第一項の規定による開示をすべき証拠の開示を受けた場合において、その証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張があるときは、裁判所及び検察官に対し、これを明らかにしなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第一項後段の規定を準用する。

<判断>
刑訴法316条の17は、被告人又は弁護人において、公判期日においてする予定の主張がある場合に限り、公判期日に先立って、その主張を公判前整理手続で明らかにするとともに、証拠の取調べを請求するよう義務付けるものであって、被告人に対し自己が刑事上の責任を問われるおそれのある事項について認めるように義務付けるものではなく、また、公判期日において主張をするかどうかも被告人の判断に委ねられているのであって、主張すること自体を強要するものではない

自己に不利益な供述を強要するものとはいえないから、憲法38条1項違反をいう所論は前提を欠く。

 

  • 百選56事件(公判前整理手続後の訴因変更)
  • 論点公判前整理手続後の訴因変更の可否 B 論証 訴因変更の請求が許される手続段階について,刑事訴訟法は特 に制限を付しておらず,公判前整理手続後の証拠調べ請求が制限 されている(316条の32)のとは異なり,訴因変更の請求に関する 制限は設けられていない。. しかし,公判前整理手続は,当事者双方が公判においてする予 定の主張を明らかにし,その証明に用いる証拠の取調べを請求し, 証拠を開示し,必要に応じて主張を追加,変更するなどして,事 件の争点を明らかにし,証拠を整理することによって,充実した 公判の審理を継続的,計画的かつ迅速に行うことができるように するための制度である。. そこで,公判前整理手続に付しながら,その意味を失わせるよ うな訴因変更の請求は許されないと解すべきである
  • 百選57事件(公判前整理手続における主張明示と被告人質問)cf新司過去
  •  
  • 最高裁判所の見解

    公判前整理手続は,充実した公判の審理を継続的,計画的かつ

    迅速に行うため,事件の争点及び証拠を整理する手続であり,

    訴訟関係人は,その実施に関して協力する義務を負う上,

    被告人又は弁護人は,刑訴法316条の17第1項所定の

    主張明示義務を負うのであるから,公判期日においてすることを

    予定している主張があるにもかかわらず,

    これを明示しないということは許されない。

     

  • 百選58事件(公判前整理手続後の証拠調べ請求)

「証拠開示が十分に受けられないまま公判が始まった」

阪高裁の決定は、2019年5月、飲酒後に車を運転して大津市で事故を起こし、

当時9歳の男児を死亡させたとして、会社員の男が、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死)の罪で在宅起訴された事件に関するもの。弁護人の辻孝司弁護士によると、過失運転致死罪の適用を求める弁護側は「争点と証拠を整理する必要性がある」として、同年12月、大津地裁に公判前整理手続を求めたが却下された。大津地裁は、今年5月の初公判当日、公判がはじまる直前に公判前整理手続を1回だけ実施した。

辻弁護士によると、大津地裁の大西直樹裁判長は、公判前整理手続で「公判中の証拠調べ請求は、(原則的に)法律上できないけれど、(今回の事件は)やむを得ない事由に該当する。裁判員裁判ではないから、柔軟に使えば良いのではないか」と発言。また、「(他の裁判所に勤務していた10年前にも)同様の運用をした」と説明し、休憩をはさんだ直後に公判を始めた。

辻弁護士は、「証拠開示が十分に受けられておらず、おかしいと(大西裁判長に)反論したが、最終的には、裁判所の柔軟な対応を信じて受け入れた」としている。

  • 百選68事件(証人尋問における被害再現写真等の利用)

公判前整理手続は,充実した公判の審理を継続的,計画的かつ

迅速に行うため,事件の争点及び証拠を整理する手続であり,

訴訟関係人は,その実施に関して協力する義務を負う上,

被告人又は弁護人は,刑訴法316条の17第1項所定の

主張明示義務を負うのであるから,公判期日においてすることを

予定している主張があるにもかかわらず,

これを明示しないということは許されない。

 

こうしてみると,公判前整理手続終了後の

新たな主張を制限する規定はなく,

公判期日で新たな主張に沿った被告人の供述を

当然に制限できるとは解し得ないものの,

  • 百選95事件(量刑と余罪)量刑判断に余罪は考慮できるか. 起訴されていない罪を余罪として認め、実質上これを処罰する趣旨で量刑判断に利用することは許されない。. ただ、 犯罪の動機や目的、方法、被告人の性格等の情状を推知するために用いるのは許される と考えられている。. 起訴していないにも関わらず実質処罰するような行為が認められないのは、「不告不理の原則」や 「法の適正な手続」を保障する憲法31条 、「証拠裁判主義」を定める刑事訴訟法317条、「二重処罰の禁止」などを保障する憲法39条などに反するおそれがあるのがその理由である。.
  • 百選96事件(無罪判決後の勾留)

民法改正

改正民法404条(法定利率)

利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2 法定利率は、年三パーセントとする。

3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。

(1)高すぎた法定利率

「実情に合わない部分」の改正の典型といえるのが法定利率の改正です。

お金を支払わなければならない人が支払いを遅らせてしまった場合、ペナルティとなる利率は、改正前民法404条においては「年五分」…1年にあたり5%…と規定されています(ペナルティについて当事者間で特別に定めている場合はその利率に従います。定めていない場合に適用される利率です)。

一方、バブル崩壊以降、預金をした場合の利率の下落は止まらず、今では年利1%も下回って手数料で消えてしまうとお嘆きの方も多いのではないでしょうか。

そのような実情では、標準となる法定利率を年利5%とするのはあまりにも高すぎて支払いが遅れた人に酷なことです(たとえ遅れずに支払っていたとしても、お金を受け取った人は1年あたり5%も増やせなかったはずだ、という発想です)。

(2)今後は3%に

そこで、改正民法においては、この法定利率をひとまず年5%から3%に変更されました。

この法定利率はずっと固定されるものではありません。
年利3%が実情に合わない場合、再び同じ問題が生じてしまいますから、あらかじめ利率の改定を想定し3年ごとに見直す条項も設けられました。

3、時効制度が大きく変わります

 

(1)権利を主張できなくなる「消滅時効」制度に様々な変化が

権利を一定期間行使していなかった場合に、権利主張ができなくなる「消滅時効」についても「どの段階で時効が完成したことにするか」という時効期間を中心に多くの改正

今回は「消滅時効期間」にスポットを当ててご説明します。

(2)主観的起算点(知った時)の新設

改正民法166条(債権等の消滅時効

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。  

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。  

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。

消滅時効の完成について原則的なルールが変更されています。

改正前民法においては「債権」(人が人に対して、何かすること/しないことを求める権利)についての消滅時効期間は、原則として10年とされていました。
これは債権を持つ「債権者」(たとえばお金の貸し借りなら、貸したお金を返しなさいといえる貸主)が権利について知っていても・知らなくても10年で時効が完成する、ということです。

改正民法においてもこの原則は据え置きですが、「債権者が権利を行使できることを知った時から五年間」という形で、より短い時効期間も加えられました。
そのため、権利を主張できることを知っていたけれど放置してしまった、という場合には半分の5年間で時効にかかる

一部例外はあると思いますが、たいていの場合は権利を行使できる時に権利を主張できることを知るものです。
そのため、たいていのケースでは5年となることが予想されます。

(3)人の生命又は身体の侵害についての損害賠償請求権の時効期間

誰かの不手際で怪我をしてしまった又は命を落としてしまった場合、その「誰か」に対して損害賠償を請求できる権利の時効期間に、被害者保護の観点から重要な改正が行われています。

改正民法724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効

不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。

不法行為の時から二十年間行使しないとき。

まず、他者から故意または過失によって被害を受けた場合に損害賠償を請求する権利については(これを「不法行為」といいます。)、従前の「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間」という短期の消滅時効期間が維持されており、これが原則となります。

改正民法724条の2(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号(編注:724条1号)の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

しかし、故意又は過失によって「生命又は身体」に被害を受けた方は、損害賠償請求権の時効期間を「損害及び加害者を知った時から」「五年間」となっており、改正民法724条の規定する「三年間」よりも2年分長くなっています。

改正民法167条(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号(編注:166条1項2号)の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。    

先ほどご説明した改正民法166条1項2号の定める「権利を行使することができる時から十年間」という消滅時効期間についても、改正民法167条は「人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権」の場合には、例外的に時効が完成するまで権利を行使することができる時から20年必要になるよう特別の定めを設けています。  

これは、(交通事故などの不法行為ではなく)「債務不履行」(課せられた義務を果たさなかったこと)によって生じる損害賠償責任(たとえば、合意どおりに治療しなかった医療過誤、職場における監督者の安全配慮義務違反など)を追及する場合に重要な意味を持ちます。

医療過誤や職場の事故で亡くなってしまった場合、亡くなってすぐには第三者の不手際があったことが判明しないことも多いため、ご遺族が損害賠償請求を行う場合には特に重要な改正といえるでしょう。

4、個人根保証契約では極度額を定める必要があります

 

改正民法465条の2(個人根保証契約の保証人の責任等)

一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

3 第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。

(1)そもそも個人根保証契約とは

 

「根保証」とは、継続的な取引関係の中で発生する様々な債務について保証するものです。  
改正前民法465条の2では、個人が「貸金等債務」について根保証を行う場合には、「極度額」(限度額)の定めがなければ無効、と規定していました。
際限なく借金が膨らむ可能性があることから、保証した人の責任を限定する形で保護するための規定です。

(2)個人根保証全体への拡大

改正民法では、上記の「個人が根保証する際には限度額を定めなさい」という制限を、貸金等の債務だけでなく根保証契約全体に拡大

この影響が最も大きいと考えられるのが、不動産業界です。
不動産を借りるときには通常、賃料等を確保するため保証が求められますが、その際、保証の内容としては「連帯保証人は借主と連帯して、本契約が存続する限り、本契約から生じる借主の一切の債務を負担する」等と規定されているのが通例です。
このような文言の保証契約も、まさしく根保証契約ですから、保証会社等の法人ではなく個人(借りる人の親戚など)が保証する際には、限度額を定めなければ無効になります。

身近な契約…という意味では多くの人に影響のある改正といえますが、実際に気を付けなければならないのは不動産を貸す・賃貸を仲介する方々でしょう。

5、相殺禁止の緩和

 

改正民法第509条(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)

次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。

一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務

二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)

(1)物損事故の解決にも変化が

最後に、われわれにとって最も身近な紛争のひとつである交通事故に関わる改正について、もう1点触れておきます。

改正民法においても、たとえば出会い頭の事故でお互いに過失がある形でどちらの自動車も壊れてしまった場合、運転していた当事者たちは、互いに相手に対して過失によって人に損害を与える「不法行為」を行ったことになり、自動車の修理代等の損害を賠償する責任を負います。

(2)改正前民法における「相殺禁止」

過失によって人から損害を与えられた場合、その賠償を求めることができる権利については、改正前民法においては相殺することが禁じられていました。
理由としては、「不法行為」を受けた人が、たまたま加害者に借金があったりした場合に現実にお金を受け取れないことが酷である、相殺が可能だと報復を誘発してしまう(50万円の物を壊した相手の物であれば、50万円までならタダで壊せることになってしまいます)、といったことが挙げられます。

不法行為といっても、故意に大けがをさせたような刑事罰まで科される悪質なものから、非常に軽微なもの(たとえば飲食店でコップを落として割ってしまった場合も厳密にいえば不法行為が成立しえます)まで様々です。

(3)一部のケースを除いて相殺が許されるように

そこで、改正民法509条においては、「悪意による不法行為に基づく損害賠償」、「人の生命又は身体の侵害による損害賠償」以外のケースでは、不法行為によって生じた損害賠償請求権であっても他の権利と相殺することが許されるようになりました。

(4)物損事故における相殺

たとえば、交通事故でお互いの過失が同じ(50対50)で互いに修理代の半分を負担しなければならず、Aさんの自動車の修理費用が100万円、Bさんの自動車の修理費用が50万円というケースで考えてみましょう。

AさんはBさんの車の修理費用のうち50%の25万円分の賠償義務を負い、また、Bさんに対して修理費用のうち50%の50万円を請求できることになります。
この場合に、Aさんとしては、Bさんから「修理代25万円払え」と請求された場合に「Bさんも50万円支払う責任がある。そのうちの25万円分を、支払わなければならない25万円分と相殺する」と反論して、支払いを免れることができる

譲渡担保

譲渡担保とは?

譲渡担保とは、債務者が所有する物(動産や不動産)を

債権者に移転する担保

債権者が債務者の所有権や財産を一時的に担保として設定し

弁済された時は債務者に所有権や財産を戻し、

債務不履行の時は所有権や財産を債権者に譲渡する仕組みです。

所有権の移転が可能であれば、どんな物でも譲渡担保の対象になり得る

物的担保とは?

物的担保は法的に担保物権と呼び、

債権回収の確実化のために提供されているものを指す。

譲渡担保も物的担保の一つです。

物的担保は法定担保物権と約定担保物権の2種類にわけられますので、どのようなものがあるのか簡単に見ていきましょう。

物的担保
法定担保物権 政策的な必要性から一定の事情がある際に法律上当然に成立する担保物権
約定担保物権 債務者の信用を創出するために当事者の合意で設定される担保物権

民法第二編には規定されていない約定担保物権は変則担保とも呼ばれています。

法定担保物権の種類

法律上当然に成立する法定担保物権は次の2種類

法定担保物権の種類
留置権 債権の弁済を受けるまで手元に留めておける権利
先取特権 法律上当然に優先的に弁済を受ける権利

 

約定担保物権の種類

法定担保物権とは違い、約定担保物権は次の4種類で構成されています。

約定担保物権の種類
質権 物品や権利書の債務の返済がされるまで占有し、債務不履行で優先的に弁済を受けられる権利
抵当権 土地と建物に金融機関が設定する権利
譲渡担保 債務者が所有する物(動産や不動産)を債権者に移転する方式の担保
仮登記担保 金銭債権を返済できない際に物を債権者に売却することを債務者と約束して仮登記する担保

宅建と最も関わりがあるのは、住宅ローンの手続きと関連する抵当権です。

譲渡担保の性質

譲渡担保の性質は「お金では弁済できない、だけど債権や動産は持っている」という場合に、当事者の間で担保を譲渡する形になります。

債務者は約束の日までに担保とした債権を弁済すれば良い制度です。

民法上で譲渡担保に関する明確な決まりはなく、判例や実務上慣習的に認められています。

譲渡担保の目的物と対抗要件

譲渡担保を設定した場合は契約書を作成するだけではなく、担保を設定した事実を第三者にわかる形で記録する対抗要件が必須です。

具体的に対抗要件は、「担保に取った債権の債務者に内容証明郵便を送る」「債権譲渡登記をする」という2種類の方法で取得します。

動産の場合

譲渡担保の代表的な目的物は動産で、車や時計など不動産以外の物を指します。

民法86条では、「不動産以外のものは、すべて動産とする」と定義付けされていました。

抵当権では限られた担保しか設定できませんが、譲渡担保なら所有権の移転が可能なら何でも対象になる

動産の第三者への対抗要件は引き渡しです。

ここでいう引き渡しとは、目的物の占有者が手元に置いたまま占有を他者に移す占有改定(民法183条)で行われます。

不動産の場合

マンションや戸建てなどの不動産は、質権や抵当権でも譲渡担保の目的物に設定OK!

ただし、質権や抵当権を実行するに当たり、民事執行法に則って時間のかかる手続きを取らないといけません。

不動産の場合の対抗要件は、所有権の移転登記になります。

所有権の移転登記が対抗要件になる点は他の担保も同じです。

債権・財産権の場合

譲渡担保では譲渡できるかが条件で、売掛金などの債権や著作権などの知的財産権も目的物として設定できます。

 

「なお、動産、有価証券、債権、不動産、無体財産権等のほか、法律上まだ権利と認められていないものであっても、譲渡できるもの(手形を除く。法附則第5条第4項)は、すべて譲渡担保の目的物とすることができる」

 

債権や財産権の対抗要件は、「第三者に通知をする」「第三者から承諾を得る」「登記をする」といった方法があります。

譲渡担保設定の具体例

譲渡担保は様々な取引の場面で活用できます。

  • メーカーが卸売業者に製品を納品して卸売業者が小売業者に転売しているケースで譲渡担保を活用すれば、卸売業者が代金の不払いを起こしても売買代金債権を自社で回収できる
  • 下請業者が元請業者の工事代金債権を譲渡担保に取れば、元請業者が代金の不払いを起こした時に発注者に対して保有している工事代金債権を自社で回収できる

どちらにしても、取引先(債務者)による支払いが遅れても代金に充てることができます。

譲渡担保を設定するメリット

譲渡担保を設定するに当たり、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

  • 取引先(債務者)からの支払いが遅れた際に、催促しなくても債権や動産を直接回収できる
  • 万が一取引先が破産しても、担保を取っていた債権や動産から支払いを受けられる

債務者の立場になって考えてみると、譲渡担保はお金を借りて返せなくなった時の身代わりのような存在ですね。

「不動産だけではなく動産でも同じような担保設定ができないか?」というニーズから譲渡担保が登場しました。

譲渡担保を設定する際の注意点

  • 担保に取る債権がどれかを明確に契約書で特定しないと無効になって回収できない
  • 債務者が担保物を第三者に譲渡したり重ねての担保設定をしたりするリスクがある
  • 債務者の他の債権者が設定した担保物を差し押さえする恐れがある
  • 担保物の滅失や破損によって担保としての機能が低下することがある

譲渡担保では債務者が占有を続けるパターンが多いため、様々な問題が生じると心得ておかないといけません。

譲渡担保の設定手続きの流れ

譲渡担保の設定手続きの流れは次の4つのステップです。

  1. 最初にどの債権や動産を担保に取るのか決める(取引先の協力が得られるかの確認が必要)
  2. 担保物をできる限り特定して債権譲渡担保設定契約書を作成する
  3. 債務者に内容証明郵便を送ったり債権譲渡登記の手続きをしたりする
  4. 取引先の支払いが遅れた時は処分清算型・帰属清算型のいずれかの方法で担保を実行する

もし担保を実行して債務者の債務額より担保物の価値が高い場合、差額を清算して債務者に支払う形になります。

譲渡担保に関する判例を分かりやすく解説!

  • 判事事項:譲渡担保権者(債権者)が譲渡担保で保証された債権が弁済期後に、対象物の不動産を第三者に譲渡した場合に取り戻せるのか
  • 裁判要旨:譲渡担保権者が被担保債権の弁済期後に目的不動産を譲渡した場合、背信的悪意者に当たる時と否とで関わらず債務を弁済して目的不動産を受け戻せない

不動産を取り戻すことができないと考えないと、権利関係の確定しない状態が続く